山口県北東部の人口約3,000人の小さな町、
阿武(あぶ)町。
山と海に囲まれた町は、観光地としてにわかに活気付きつつある。
阿武の鶴酒造は伝統的風情のある町並みに佇立する。
大正4年の創業以来、「阿武の鶴」を醸造していたが、昭和58年に自社製造を休止。
そこから時を経て、現在の杜氏・三好隆太郎さんが休眠していた実家の酒蔵を復活させたという。
誰もいない酒蔵玄関口で声をかけ、しばらく。
遠くから三好さんが走って迎えてくれた。
「仕込み中で、すみません、どうぞ、中へ」
酒蔵には当時の樽や桶がそのまま残り、
自分がタイムスリップしたような、不思議な感覚があった。
元内装デザイナーという異色の経歴をもつ三好さん。
自らの姓を冠した日本酒「三好」は、
“一つ一つの工程を丁寧に、
1滴に映り込む笑顔まで醸したい”
という想いが込められているという。
ラベルのくり抜いた雫は、その1滴を表現しており、
SAKE COMPETITION 2017のラベルデザイン部門では7位受賞。
日本パッケージデザイン大賞2021で入賞など、
そのセンスはブランドの周知に強く影響している。
その先進的デザインとは裏腹に、
三好の醸造工程はほとんどが手作業。
仲間と阿吽の呼吸で蒸した米を運ぶ。
温度、風を読み米の環境を見定める。
感覚を研ぎ澄ませ、米を攪拌させていく。
三好さんの目には、すでに完成した姿が見えているのかもしれないと思った。
何に関してもクリエイターという根があるのだろう。
そんな「三好」はフルーティさが香り立ち、
米の風味の余韻はいやらしさなく残る。
飲んだ瞬間、美味しさが吹き抜けるような心地がするお酒だ。
昨年から発売された
新ブランド「MIYOSHI HANA」
イヤーボトルで5年に渡って展開していく。
2020年をベースに、その年に手掛けた日本酒をブレンドして作られる。
「合咲醸造」という新たな手法だ。
その手法に準えて、ラベルは1年ずつ、蕾から開花する様子を表現している。
第2咲目が4月3日に発売された。
4年後に咲き誇るHANAが楽しみだ。
三好 阿武の鶴酒造合資会社
山口県阿武郡阿武町奈古2796
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